暮らしのトラブルQ&A 【Vol.29】
袋地への通行が妨害されている 【相談者/63歳(男性)】
Q 約10年前に、相手方が所有していた土地の一部を購入しました。しかし、私の購入した土地は袋地になっているため、公道へ出るには相手方の土地(私有)を通らねばなりません。
最近、相手方の土地内の通路にいろんなものが置かれて、私の通行が妨害されています。何とかならないでしょうか。
A そもそも袋地の所有者は、公道に出るために囲繞(いにょう)地通行権というものがあります。公道に出るための隣地である囲繞地にとって、必要最小限の損害を与える通行の場所・方法により、そこを通行する権利があります。
また、あなたの場合には、通行地役(ちえき)権すなわち、ある土地のために他人の土地を通行する権利も成立すると思われます。あなたは妨害物の排除を請求することができるのです。
Q 今後のこともあり、こうした通行ができる権利を土地登記簿上にもきちんと明記しておきたいのですが、どのような方法があるでしょうか。
A 通路地に対し、通行地役権の設定登記をすることです。袋地を相手方から購入するときは、購入時において、この通行地役権の設定契約を相手方と結んでおくべきです。この契約に基づき、登記がなされることになります。
Q 私の場合は、土地購入時にそのような契約を締結していないのですが、今から登記はできないのでしょうか。

大切な土地だからこそ、トラブルはしっかり解決したいですね
A あなたの場合のように、相手方の土地の一部を通行することが土地売買の当然の前提となっているようなと きには、売買時に明確な契約をしていなくても、そのような契約があったと見るのが当事者の合理的意思と解されます。そのため、裁判例ではこうした場合につき「黙示の合意」があったとして、地役権設定登記を認めています。
ですから、あなたとしては、相手方に地役権設定登記の同意を求め、もし相手方が応じてくれない場合は、裁判を提起し判決に基づいて登記をすることになります。詳しくは、専門家へ相談を。
山下江
広島弁護士会所属。
広島市中区 山下江(やましたこう)法律事務所
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提供:広島リビング新聞社
(「リビングひろしま」2010年11月13日号掲載)