暮らしのトラブルQ&A 【Vol.46】
退職にあたり、会社から出資金を返してもらいたいが… 【相談者/60歳(男性)】
Q 私は株式会社に勤めて約15年になります。その間、取締役になった際に、社長の要請で100万円を出資しました。今度、会社を退職することになったのですが、100万円の出資金を会社から返してもらうことはできますか。
A 残念ながら、返してもらうことはできません。出資金は会社の資本金などに組み込まれるものであり、会社に返還義務はありません。この点で、返還義務のある貸付金とは異なります。
Q では、100万円を回収するにはどうすれば良いのでしょうか。
A 出資したということは、あなたは会社の株主です。このことはあなたが会社を辞めても変わりません。あなたは、会社があげた利益を配当という形で受け取ることができます。株主にいくら配当するかは、株主総会で決定されます。今まで配当を受け取ったことはないのですか。
Q 少なくとも私が出資して株主になってからは配当はありませんし、また今後もあるかどうか分かりません。配当以外での出資金の回収方法は何かないのですか。

長年勤めた会社とは退職後もよい関係でいたいもの。こじれそうなときは専門家に相談を
A 一番良いのは、その株式(出資金分)を会社か社長に買い取ってもらうことですが、それが無理なら、第三者に買い取ってもらうことです。株式の譲渡は原則自由ですが、定款にて「株式の譲渡は取締役会の承認が必要」と定めていれば、それが必要です。
Q 私の会社の定款では、取締役会の承認が必要と定めています。もし、取締役会の承認が取れないときはどうすればよいのでしょうか。
A 承認してもらえないときは、会社に対し、他の買取人を指定するように請求でき、指定された買取人に株式を譲渡できます。
Q その場合、株式の売買価格はどうなりますか。
A 売主と買主との間で合意できればそれによりますが、合意できないときは、裁判所に対し、売買価格決定の申し立てができます。
山下江
広島弁護士会所属。
広島市中区 山下江(やましたこう)法律事務所
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提供:広島リビング新聞社
(「リビングひろしま」2012年4月14日号掲載)